戸隠 P1尾根

期間 2019年2月10日〜11日
メンバー 杉橋、深美、小林
カテゴリ アルパイン積雪期
ルート P1尾根
行程
  • 1/9(土) 21:00深美邸→3:00道の駅しなの(仮眠)
  • 1/10(日) 7:00上楠川公民館→9:30天狗原→12:30熊の遊場→14:30無念の峰直下(BC)
  • 1/11(月) 6:30無念の峰(BC)→7:15蟻の戸渡→8:20西岳P1→9:30BC撤去→12:00天狗原→13:30上楠川公民館

詳細

土曜日20:30、森ノ宮出発。休日出勤明けの深美さんを拾って、一路、長野へ向かう。途中、大雪の道の駅しなので仮眠後、コンビニで朝食調達し、戸隠方面へ。1時間弱で上楠川の集落に到着。ザック担いだ若者3人組が歩いていた。(以下、この3人組を「学生さん」と呼ぶ。学生さんかは知りません。)公民館(?)近くの橋の手前の路肩に駐車。すでに2台あり。3台は確実に停められる。

装備を整え、公民館脇の林道から入山。しばらく川沿いの林道を歩く。橋を渡って左岸へ。学生さんたちのトレースを追って、なかなか際どい渡渉を繰り返す。…これはデジャブか?いやいや、7月もこの3人で滝谷を下から詰めたとき、厳しい渡渉を繰り返した…。思えば、杉橋さんと一緒の山行では毎回渡渉しているような気がする…。明星も靴下脱いで渡ったな、11月の屏風では石を放り込んで道を作ったな、年末の屏風もわかんで渡渉した。極めつけは7月の滝谷。台風で増水した川に何度はまったことか…。

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なんて思い出に浸っている場合ではなく、P1尾根に取り付くには右岸に居なくてはならない。学生さんたちを追うのは止め、わかんを付け、なるべく右岸側をキープ。川沿いを行き過ぎるとダイレクト尾根の方まで行ってしまうので、適当なところで左の尾根に上がる。白いスズランテープがそこらじゅうの木に巻き付けられているが、おそらく作業用。しばらく行くと、ピンクのリボンが付く浅い沢にたどり着く。あまり川から離れると違う方向に行ってしまうので浅い沢からトラバース気味に上がっていくと平坦な樹林帯にたどり着き、しばらく行くと視界が開け、天狗原に到着。「西岳登山道」の看板あり。一般道は川沿いから急斜面を上がって天狗原に繋がっているよう。ここで、山に向かって左からのトレースと繋がる。おそらく昨日のトレースか?

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正面の尾根に向かって、ほとんど残っていないトレースを辿る。緩斜面から急になってきたので、アイゼンに切り替えようと袋から出したら、な、なんと!アイス用のモノポイントが出てきた!若干凹む…。気を取り直して、一登りすると望岳台。ガスってはいるが、P1尾根を正面に、右にダイレクト尾根を確認。正面の樹林帯を越えたあたりが「熊の踊り場」か?

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しばらく行くと、3人パーティに擦れ違った。昨日、無念の峰直下で幕営し、今日アタックしたが、雪の状態と天候が悪く、前のパーティが時間掛かりそうだったので、引き返してきたとのこと。ここからこのパーティのトレースを使わせてもらう。岩を回り込んだりしてしばらく登ると鞍部に出て、正面にツララがぶら下がっている急斜面に出た。トレースはツララの岸壁の左の雪面に続いている。ツララの岩場の基部までノーロープで行ったが、ところどころ悪くてドキドキした。なんせモノポイントなもんで、若干前爪の引っ掛かりが甘く、長い爪が邪魔に感じるし、何より爪を傷つけたくないので変に気を使ったが、案外、モノポイントでも普通に登れるもんだと思った。

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ツララの壁の基部でロープを出していると後続の学生さんたちが熊の遊び場手前でテントを設営しているのが見えた。おそらく渡渉に手間取って時間掛かったのだろう。テント場がずれたので、明日の渋滞は免れそうで安心。ロープを結んで、杉橋さんトップで出だしの足場が切れ落ちた雪面を木登り混じりで登る。40mくらい。次のピッチは左のルンゼ。大丈夫そうだが、そのまま確保して深美さんが50mいっぱい伸ばす。次のピッチはロープ付けたままノービレイで登ると鞍部に出た。次の急斜面を登ると無念の峰か。と、ピークに向かって右に下がったところにテントの跡を発見。先程擦れ違った3人パーティのものだろう。ちょうど良く整地されているので、今日はここまでとする。おかげさまでほとんど整地する手間なく、3人用テントと眺めの良いトイレをパッパッと設営し、テントにイン!

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雪がちらつく程度で穏やかな天気だったけど、テントで温かいものを飲むとやっぱりホッとする。八ツみたいに賑やかなテント場でなく、自分たちだけで尾根に張るテントって、山とじっくり向き合える気がしてやっぱりいいなぁとしみじみ思う。私は屋久島土産のちっこい「三岳」しか持ってこれなかったけど、深美さんが担いでくれたビールとパウチのお酒900mlを有難く頂き、話にも花が咲く。16時前だったか、人の声が聞こえた。下山していたパーティが言っていたもうひとつのパーティだろう。こんな時間にここに居るとは随分時間掛かりましたな。このままでは今日のうちに下山は厳しいでしょうな。なんて完全他人事でこちらは各自晩御飯。

その後も何だかんだ21時頃まで飲んで、明日は10時リミットで引き返すことで就寝。プロモンテの3人用テントは3人ではかなりキュウキュウかと覚悟していたが、細身2人(杉橋・深美)+ちびっ子(私)のせいか、それほど狭くなく、逆に寒くてあんまり眠れず起床時間の5時を迎える(まあ雪山ではいつものことですが)。夜中は風が強く吹いていたが、朝はまた穏やかな天気。ご飯食べ終わった6時前はまだ暗かったのでのんびり準備して、すっかりヘッドライトも要らなくなった6時半に出発。

目の前の急斜面を登ると無念の峰。向かって左下にテントの跡あり。埋め込まれた残置のアンカーを使わせてもらって、5mほど懸垂してギャップに降りる。下山時の登り返し用にお助け紐でも掛けておきましょかと話すが、後続パーティが居るからややこしいかなということでも何もせず。その後は昨日下山した人のトレースを辿ってナイフリッジを楽々通過。

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次がおそらく今日の核心の蟻の塔渡り。ロープを出して、鎖のある岩場から木登りで雪面に上がる。

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ここを越えれば稜線はすぐそこ。雪庇を巻くように左にトラバースするトレースがあったが、せっかくなので正面の雪庇を深美さんがほじくって突破した。

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10時リミットにしていたが、余裕で着いて一安心。

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次はダイレクト尾根からP1下山か?稜線もなかなか厳しそうだな、なんて狙いを定めて、帰りは雪庇を巻くトラバースのトレースを辿って下山する。急なところは懸垂するが、木で支点を取ったので(グラグラするのもあったけど)、土嚢袋や森田さんが「戸隠行くなら…」と貸してくれたお手製竹ペグアンカーは使わず済んだ。なんで、残置シュリンゲは多めに持っておいた方がいいでしょう。また、登りで懸垂した無念の峰に上がるところはロープを出した。

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9時半にテント場着。ここからは2回懸垂。あとはサクサク下って、天狗原。なるべく渡渉は避けたいので、行きとは別のルートを探した方がいいかなぁなんて言ってたけど、トレース(おそらく昨日遅くに下山していたパーティ)は我々の行きのトレースを辿っていたので、そのまま使った。もう終わりは目前なので渡渉も大胆にこなし、深美さん以外は結局ノーミスでクリア!(深美さんは最後の最後でバッチャーンとなっていました…。南無南無。)おそらく例年に比べて雪が少なく、トレースを使えたのもあるが、予定より大分早めの13時半に車に戻ることが出来た。

下山は夕方と覚悟していたのでほとんど諦めていたが、この時間なら戸隠そばが食べられる!と気持ちは下山後のお楽しみに完全シフト!まずは、車で10分ほどの神告げ温泉へ♪。道中も両脇蕎麦屋だらけでテンション上がる〜。広々した温泉で暖まってから、深美さんが探してくれた戸隠神社近くのおすすめ店「うずら家」さんに行く。先程通った時は行列だったけど、待っているのは1組だけになっていた。ラッキー♪。メニューを持ってきてくれた気のいいお店のおっちゃんにおススメを聞くと、「寒いけどやっぱりざるそば。3人なら『野菜と山菜の天ぷら』と『きのこの天ぷら』を単品で頼んで、ざるそばを各自好きな量頼むといいよ。」と的確なアドバイス。うんうん、そうします〜。10分ほど待って入店。おススメに加えて、大阪では珍しいそばがきも注文。そばがきは山芋入ってるのかと思うほど、ふわふわもっちり。きな粉やネギみそ、ワサビやタレで頂く。続いて運ばれてきた天ぷらと蕎麦がまた絶品。胡麻油で揚げた天ぷらの香ばしさとツルっとした蕎麦の相性が抜群。擦り立てワサビを蕎麦に直に塗ると辛みと風味が際立つ〜。(ちなみに温かいのなら「鳥南蛮」がお薦めとのこと。)

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雪山と温かい風呂とおいしい蕎麦ですっかり幸せ気分♪。小雪が舞うこじんまりした旅館街も風情があって、もちろん山も素晴らしく、すっかり戸隠のファンになった。次回は本院岳ダイレクト尾根、予備日で蕎麦と日本酒で一泊だね、なんて盛り上がり、お土産のりんごもSAで無事ゲットし、上手いこと渋滞も巻き、大阪に帰りましたとさ。ちゃんちゃん。

感想

雪が少なかったのでまだまだ本当の戸隠を知らないかもしれないが、ふわふわの雪のラッセルに急な雪面、ナイフリッジにキノコ雪と雪山の醍醐味が全て詰まっていると感じた。皆が薦めるのも納得!ちょっと遠いのが難点ですが、アルデ塾の皆さんも次のステップアップに是非行って欲しい山域です。

文章:小林