利尻山東北稜

期間2019年4月13〜16日
メンバー深美(L、記)、杉橋、小林
カテゴリアルパイン積雪期
ルート東北稜〜北峰〜北稜
行程4/13(土)11:15稚内空港→15:35鴛泊港→16:10アフトロマナイ川河口→17:50東北稜取付き
4/14(日)5:10テン場→12:30門の上部→16:25北峰→18:30避難小屋
4/15(月)7:00避難小屋→9:20野営場→旅館「北国」
4/16(火)09:05鴛泊港→10:45稚内フェリーターミナル <解散>

詳細

ずっと憧れでもあり遠い存在だった利尻山。

働き方改革の影響で急に4連休をとる羽目になり、何となく交通の便や登山ルートを調べるうちに4日あれば十分いけそうだと利尻山行計画が現実味を帯びたものとして浮かんできた。

2月の戸隠山行の際に利尻行きたいねーと行っていたのでダメ元で杉橋さんと小林さんを誘ってみたらなんと2人とも行けるとの回答。(小林さんは最初ダメと言っていましたが、、、うまくそそのかして仕事の都合を付けてもらいました。)誘ったのが直前で申し訳なかったです。

稚内空港まで現地集合とし、マイレージやLCCなど安く行ける方法を駆使して各々目指すことに。

(※僕はユナイテッド航空のマイルを使用しました。全日空のフライトが使えるので便利です。普段飛行機全く乗りませんがクレジットカードの支払いだけでもけっこう貯まります。)

4/13(土)

関空にて小林さんと合流。飛行機で行く山行なんて初めてなので遠征気分でテンションが上がる。札幌から稚内行きの機内にて杉橋さんとも合流しようやく全員集合。小さいプロペラ機で更に北を目指す。

大阪の自宅を朝に出て11時半には稚内へ到着。

16歳の時に最北端を目指して大阪を旅立った時はフェリーと自転車で10日くらいかかってようやく辿り着いた場所だったので、あまりにあっけなく着いて不思議な感じ。飛行機すげーなって改めて思った。

飛行機からは富士山、蝦夷富士(羊蹄山)、利尻富士と3つの富士山を見ることができ縁起がいい。

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<▲稚内の町と利尻山>

稚内空港からフェリーターミナルへの直通バスに乗り、ガスと食料の調達の為稚内駅で降りる。ガスは稚内駅から大通りを越えた商店街にあるハセガワスポーツさんで購入。同じ通りの相沢食料百貨店という名のスーパーで買い出しと昼食をすませる。イートインコーナーがありウニちらし丼や大きな豆の赤飯など北海道ならではの食材を頂く。

稚内駅周辺からフェリーターミナルまでは徒歩で10分程度。いよいよ利尻に向けてフェリーに乗り込む。

2等の部屋はよくある雑魚寝スタイルで甲板には自由に出入りできる。風は強く誰も外には出ていないが遠ざかる稚内の町並みがなんともいえず旅情を掻き立てる。

しばらく部屋でゴロゴロしたり船内ウロウロして過ごしているうちに利尻富士が姿を現す。雪をまとったその姿は雄々しくつい見とれてしまう。

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<▲フェリーからの利尻山>

利尻の鴛泊港に到着するとすぐにタクシーの運ちゃんから声がかかる。島に3台しかないタクシーの1台らしい。島の周回道路からアフトロマナイ川に沿って林道が続いているので行ける所までタクシーで行ってもらう作戦だったが、林道入り口に通行止めの看板が立っており中に進めず。予期せず海抜0メートルからの出発となった。

アフトロマナイ川にかかる堰堤の上を渡った後、日没も迫ってきた為東北稜の尾根へ取り付く手前にて幕営。(標高約350m)

翌日の天気予報は悪く頂上付近の風速は28m/sとのこと。不安を感じながらもとりあえず行けるとこまで行ってみようと就寝する。

4/14(日)

夜中には時折テントごと飛ばされんじゃないかと思うくらいの猛烈な風が唸りをあげている。2:30の起床予定も内心これは無理やろと思って2度寝しそうになっていたが他の2人が起きて支度しだしたので慌てて起き出す。

4時の出発予定だったが天気悪く視界悪い為しばらく待機。少し回復した5時過ぎ頃に出発する。風は依然として強く体を持っていかれないように耐風姿勢をとりながらすこしずつ高度を上げていく。

しばらくして風は次第に弱まってきたが足元は切り立ったリッジが続くようになり気の抜けない登りが続く。数メートル先も見えない視界の為、自分たちが今どこを登っているのか判らなくなるような感覚にしばしば陥った。

リッジ上で行き詰まる場面にも多々出くわし、その際はいったん戻り岩稜帯を捲くように急な斜面をトラバースする必要があった。

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<▲岩稜帯をトラバース>

特徴的なシルエットで本来ならば顕著な目印となる三本槍(標高1400m付近)もいまいちどこだかわからず。ただペース自体は順調で三本槍付近と思われる場所で10時半頃とほぼ予定通りだった。

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<▲三本槍付近、わずかな晴れ間>

そうしている内に「門」と呼ばれるこのルート唯一の登攀箇所(1ピッチ)が現れる。深美リードで凹角を登り、ブッシュでランニングを取る。登りきったところでスノーバーとピッケルで終了点を作る。

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<▲門をリード中>

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<▲門の終了点から下降、雪庇に要注意>

その後ローソク岩を左から捲き、懸垂ポイントを探す。(真っすぐ進むと古い本などに記載のある「窓」と呼ばれる部分だと思われるが崩壊しているようで進める状態ではなかった。)

残置シュリンゲがあったので右手に向かって深美が懸垂で降りていく。ブッシュを越えて降りていくが全く下降地点が見えず、終わりのない深い谷底に延々とロープが延びているような感覚だった。ロープの残りも少ない為ここではないと判断し一旦登り返す。

ブッシュ帯を登り返す時にザックが引っかかるなどして、もたついてしまい時間を取られる。

懸垂地点に戻ったがロープが引っかかって引き上げあれず、杉橋さんが空身になって懸垂で様子を見に行ってくれた。すると下の方から「このまま行けそうだわー」と声が聞こえてきた

先ほどの底無しかと思われた場所ももっと突っ込んでいけば斜面に着地することができたのだ。自分の判断ミスと登り返しに費やされた無駄な時間と労力にへこむ。

ともあれ核心部分も終わりあとは山頂まで歩くのみと思っていたがここからが本当に長かった。依然ホワイトアウト状態で行けども行けども登りは続き、地面と空との境界もわからずただただ高い方へと進んでいく。距離感もわからなくて、あんな遠そうに見えていた岩も急にすぐ近くに現われてびっくりしたりなんだか異世界に迷い込んだかのような感覚に陥ってしまう。

そんな中、急に頂上の祠が姿を現す。凍てつく北風をもろに受けて無数のエビの尻尾がこびりついている。やっと山頂までたどり着いたと喜んだのも束の間、猛烈な風が吹きつけているので記念撮影もそこそこに急いで北稜を下っていく。

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<▲利尻山頂上にて(北峰)>

北稜は一般道だしあとは下るだけで楽勝だとタカをくくっていたが北からの猛烈な風が雪のつぶてを容赦なく全身に叩き込んでくる。夏道もどこだか全くわからずコンパスだけを頼りにとりあえず北を目指して高度を下げていく。

標高が低くなるにつれ斜面も広がっていき、足元も悪い中そろそろ目的地の避難小屋が見えてきても良さそうだが一向に見えてこない、高度計で確認しても少し下りすぎている感じだ。

そんな時一瞬周囲を覆っていた雲が切れ、周りの景色を確認することができた。どうもまっすぐ北に進んでいたつもりが進路が微妙に右にずれ、視界の無い状態ですすむにつれ大きく道を外していたようだ。幸いなことに左手の斜面の上部には小屋らしきものが確認でき、現在位置も特定できたので一安心だった。

テントも張れないような風の中、ビバークできそう場所もなかったので内心ではこのまま日没になるとヤバいなと危機感があった。

なだらかだが長い斜面を登り返しなんとか避難小屋へ辿りつく。中は広くて充分テントを張れるスペースがある。強風で全身凍りつきアイゼンもカチカチで装備を外すのに時間がかかってしまった。

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<▲避難小屋までの登り返し>

長い一日を終え、テントに入りとりあえずお湯をわかしてコーヒーを一杯飲む。ホッと一息つくと今までの疲労と緊張が一気に襲ってきたのか一瞬にして座ったまま寝てしまう。そんなに寝たつもりはなかったが起きた時には2人とも夕食を済ませ、明日の分の水作りもやってくれていた。なんと2時間近くも胡坐をかいた状態で寝てしまっていたらしい。何もせずにすいませんでした。。。それでもまだ寝足りず結局その日は晩ご飯を食べることなく就寝。疲れていると食欲より睡眠欲のほうが勝つようだ。

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<▲避難小屋>

4/15(月)

午前中は天気良く視界良好、利尻山の山頂、周りの海や鴛泊港の町など昨日は全く見えなかった景色を見ながら下ることができた。すいすい下り2時間ほどで野営場へ到着。

避難小屋から朝一で予約を入れた「旅館 雪国」の方に迎えに来てもらう。早い時間なのにチェックインもさせてくれ、お風呂まで入れるという。本当に至れり尽くせりで至福の時間を過ごす。

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<▲北海道限定のサッポロクラシックで乾杯>

昼からは天気が崩れ雨が降ってきたが昼ごはんついでに鴛泊の町まで歩いて行き、お土産などを物色する。「ミルピス」という利尻島限定の乳酸飲料が飲みたくて探すが観光がオフシーズンのこの時期は製造元の商店にしか売ってないらしく歩いて行くには遠すぎるので泣く泣く断念する。

小林さんが買った昆布焼酎をみんなでいただき夜までまったり過ごす。晩ご飯もおいしく、ふかふかの布団が最高に気持ち良かった。

4/16(火)

最終日、快晴。移動日だけは天気いいので行きも帰りもフェリーからはきれいな利尻富士を眺めることができた。いつかまた戻ってきて違うルートも登るぞ!と決意を胸に利尻島をあとにする。

稚内から大阪へ帰るフライトは3人ともバラバラなのでフェリーターミナルで解散。空港へ向かう2人を見送る。

稚内の町ではやることもないので歩いて丘の上の公園へ。広くて誰もいない公園からはオホーツク海が一望できのんびりぼーっと過ごすにはちょうど良かった。

感想

利尻に行くのに4日間では短すぎるかとも思ったけど、中身の濃い充実した山行になりました。天気が悪く山頂からの景色が全く見えなかったのと当初予定していたローソク岩に行けなかったのは残念でしたが、その分噂にきく利尻の気象条件の厳しさや猛烈な風を少しでも体験できてむしろ良かったです。

リーダーとしてミスも多く反省点だらけですが、一緒に行ってくれた杉橋さんと小林さんに助けられ無事登頂できたのは自信にもなりました。

また力をつけていつか南稜や仙法師稜、西壁といった違うルートにもチャレンジしに戻ってきたいと強く思いました。

メモ

文章:深美