府岳連読図講習会
期間 | 2019年4月20〜21日 |
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メンバー | 平山(記)、平野、船戸、有香、崎間(記)、他30名程 |
カテゴリ | 各種トレーニング |
ルート | 道場駅周辺の里山 |
行程 | 1日目 18:30-21:30 大阪セルロイド会館にて座学 2日目 9:00-15:00 JR道場駅周辺で実技(時間は班によって異なる) |
詳細
1. 座学
1.1 基礎編
- 最近は「読図」とは呼ばずに「ナビゲーション」と呼ばれる。ナビゲーションとは目的地への誘導法のこと。メジャーでない山では登山道が不明瞭であったり、ヤブだったりする。そのようなケースでナビゲーション技術が必要になる。
- 最も精度が高いナビゲーションは、コースをよく知る人の情報。次いでGPS、その次が「地形図+コンパス+高度計」。
- 地図は原則として1/2.5万地形図を用いる。コースタイム等が記載されている登山地図は、文字情報が多すぎて肝心の等高線が見えにくい。地図上の1mmは実際の25mと対応する。25mとは新幹線1車両分の長さ。
- 等高線は10m毎。ビルの3階の天井がだいたい10m。それ以下の起伏は等高線では表現できない。また、50m毎に太い等高線(主曲線)が描かれている。
- 地図記号と実際の景色を現地観察し、対応を体感することが大切。なお、破線は登山道の記号で、一点鎖線は区界なので注意。デジタル版の地形図では、送電線の記号が記載されていないことがある。また、鉄塔は地形図上には記載されていないので注意のこと。
- 真北と磁北はずれる。西偏(さいへん) 7°とあれば、磁北は真北から西に7°ずれている。地形図上に磁北線を記載しなければ、地形図として約に立たない。磁北と地図を合わせるには、小手先だけ回転させるのではなく、体ごと回転させることが大切。
- 予定コース周辺の尾根や谷の概形をイメージし、コースに沿ったチェックポイント(ピーク、送電線など)を「予測して歩くこと」が重要。
- ベテランの人でも迷う。しかし、予測したチェックポイントが現れないことに気づくから、迷ったことにすぐ気がつく。ここが初心者とベテランの違い。
1.2 応用編
- 街の中で道に迷う人は、山の中でも道に迷う。
- 人間の体にはコンパス能力は無いことが実験的に確認されている。最初に決めた角度を覚えてしまうので、道が大きく屈曲する場合には、感覚だけでは方向を間違えてしまう。
- 自信家が道を間違えてしまうと、なかなか思い込みから脱出できない。たとえ道標を見つけたとしても、自分の方が正しいと根拠なく信じて客観性を失ってしまうので要注意。また、極端に情報が少ないと、ごく僅かな情報に飛びつき、強引につじつまを合わせようとする。
- 標高が低い地形ほど、尾根や谷の情報が不明瞭なので、迷いやすい。
- ヤブでは登りよりも下りの方が進むのに時間がかかる。下りでは木々が邪魔になって歩きにくいため。もし登山中にヤブに入ってしまったら、そこで進むのを止めて引き返すこと。登山道の方が、救助される可能性が圧倒的に大きい。
- ヘリから樹林帯の人間を見つけるのは極めて困難。銀色のレスキューシートは見えにくいので、金色の方が良い。また、乱反射させるため、グシャグシャにした方が良い。ツルツルの状態だと、周りの景色が映りこんでしまい、目立たなくなる。どのような色の服が目立つかというのは、周りの環境に依るので、一概には言えない。
- 迷ったら、まず、考える。Sit down & Think。これからどうすれば良いか、5分間じっくり考えることが大切。冷静に現在地を絞り込む。場所を確認しようとして無計画に歩くのは逆効果。
2. 実技
@50mの距離における歩数確認
50m歩いて歩数をカウントすることを3回繰り返し、50mに要する自己の大まかな歩数を確認した。
A地図記号の再確認
B10m高度差の下からの高度感と上からの高度感の確認
C人間の感覚の曖昧さの確認
■川幅や尾根の高さを地図では無く見た目で推測
*私(平山)の場合は、50mの川幅を70m位と感じ、現在地から次の尾根までの高度差が30mと感じたが、地図で確認すると80mであった。
■あるポイントから別のポイントに移動したとき、どの方角に動いたのかを、コンパス・地図を用いずに推測
*私は南西に移動したと思いましたが南東が正解でした。
D現在地確認
ある地点における自身の現在地を、鉄橋や高圧線を目印として2点のクロスベアリングによって確認した。
E現在地から次の目標点を地図上からコンパス確認を行い、その方向に多少、登山道を外れても進行し、見晴らしの良いポイントで再度、現在地を確認。
感想
座学のみ(崎間)
都合により座学のみの参加となりました。内容が盛りだくさんで、やや駆け足だったものの、道迷い遭難を防ぐための示唆に富んでいました。特に、迷ったときのアクションとして「Sit down & Think」を忘れないようにしたいです。
基本コース(平山)
山を始めたきっかけが、京都での単身赴任時の健康増進。体力的には、まだまだ自信もあり、休日は京都北山の低山をよく歩きました。低山、故に、山を甘く見ており、今回の読図講習会参加動機は、15年ほど前の京都北山での道迷いに起因しています。その時の道迷いの経験から、書物による自学自習を真剣に取り組みましたが今の自分の読図スキルの棚卸が目的でした。実際に講師の話を聞きながらコンパスを当て、地図を見て現在地の確認は 読図スキルの刷り込みとして大変、有意義な経験と成りました。しかし、低山の読図は今をもっても難しいと再認識。自己診断は、沢での読図は、まだまだ無理。沢で道迷いしたら冷や汗で 済まないかも知れません。今後も様々な講習会に参加したいと思っています。ありがとうございました。
基本コース(平野)
『読図』、山を始めた16年前に書籍やインターネット見て学び、ある程度は道迷いすることなく縦走登山を楽しんでいた。ある時期になるとGPS地図アプリが普及し、今ではコンパスよりGPSに重きを置くようになった。そんな時期に登山道がない山を歩く楽しみを覚えたが、GPS地図アプリにある地図(当時は国土地理院の地形図は無かった)は必要な情報が記載されていなかったため、GPSと地形図を併用するようになった。今まで読図講習会には参加したことがなかったが、今回正しい読図を学ぶ機会が巡ってきた。
講習会は『基本コース』と『応用コース』があったが、基礎を学びたかったので基本コースを選んだ。20日は座学で、国土地理院の1/2.5万地形図を基本として説明があった。1cmは250m、4cmは1kmなので、地図の1mmは25mということになり、馴染みのあるプールの長さと同じであるため認識し易かった。等高線は10mおきに主曲線、50mで計曲線が使われているが、10mの主曲線が地図上に表現できる限界だと説明があった。また、等高線の幅が狭いくなれば、それだけ傾斜が増し、傾斜が60度以上になると崖の記号になるという説明もあった。コンパスの活用法では、地形図の中から目標の方向を求め進んでいくナビゲーションや、場所の分かっている3地点から自分の位置までの方向を測定するクロスベアリングの説明があった。ナビゲーションの説明中に、PLP法が紹介されたが、今まで自分なりに行っていたことが、きちんとした手法としてあったことには驚いた。21日の実技講習はJR道場駅周辺で行われた。まず50mを何歩で歩くか3回繰り返し測定したが、私は3回とも60歩であった。次にクロスベアリングを行ったが、実際とはズレが生じてしまった。山に入り、10mの高度差は地形ではどれくらいなのか、10mの高度内に現われる地形変化を体感した。等高線の間隔と実態の地形斜度、幅1.5m以下の小川は地図に表示されないこと、PLP法等の説明があった。最後に、登山道から外れ藪こぎを体験した。
講習受講後、滋賀県比良山系の1/2.5万地形図上に登山道が記載されていない場所を選び、一人読図講習の復習に出かけてみた。4月27日は白滝山から蓬莱山の間で、長池を含む数個の池や、池の跡が点在する比較的なだらかな地形で、地形図に表現出来ない微地形が再現できる良い場所だった。途中地図上に表示が無い森山岳を見つけることが出来た。5月11日は明王谷から摺鉢山、摺鉢山から大橋、南比良峠から堂満岳、堂満東稜からイン谷のトイレ、どれも登山道から外れた支尾根で地形図の等高線の斜度を確認することが出来た。
これらを通じ自分のナビゲーションスタイルとして認識出来たことは、GPSと国土地理院の地形図を併用することで間違いないということだ。まず、クロスベアリング法ではホワイトアウトした時や、周りに認識できる目標物が無い場合、自分のいる位置が特定できないことから、GPSを優先すべきと考えた。衛星の誤差は、順天衛生『みちびき』が上がってから、沢筋でも自分の許容範囲になった。地図ソフトとハードの組み合わせ、その見やすさと使い勝手では、私は国土地理院の1/2.5地形図が現時点では一番信頼でき見易い。今回の講習会で地形図の地形読みを学べたことで、自分のナビゲーション技術の精度を増すことが出来た。もちろん、GPSの予備として携帯電話にインストールしている地図ソフトとコンパスは必需品に違いはない。
今まで、自分なりの読図法に、あらためて基本を勉強出来、大変有意義であった。
文章:平山、平野、崎間